個人事業主が納める税金は概ね6種類です。それは『所得税』 『源泉所得税』 『消費税』 『個人事業税』 『固定資産税』 『住民税』 の6種類です。以下でそれぞれ解説していきます。
①所得税
所得税は「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」のある者が確定申告により納税する税金です。
個人事業主に深く関係する所得は「事業所得」です。事業所得は総収入金額から必要経費を差し引くことにより計算されます。
確定申告は1月1日から12月31日の所得から納めるべき税金を計算して翌年の3月15日までに申告・納税する必要があります。
②源泉所得税
源泉所得税は個人事業主が従業員やアルバイトを雇った時に、給与からその従業員やアルバイトが納めるべき所得税を個人事業主が源泉徴収して、従業員やアルバイトに代わって納税するものです。
従業員やアルバイトを雇っていない場合には源泉所得税は納める必要ありません。
③消費税
消費税は個人事業主が「売上に伴って消費者から預かった消費税」から「事業のための必要経費の支払に伴って支払った消費税」を差し引いた金額を計算して申告により納税するものです。
必要経費には消費税のかかる経費と消費税のかからない経費があるため、間違いのないように処理する必要があります。
④個人事業税
個人事業税は都道府県内に「事務所又は事業所」を設け、「課税対象の法定業種」を事業として行っている「個人」で、事業所得又は不動産所得の金額が「一定の金額」を超える場合に納税する義務が生じます。
「課税対象の法定業種」はほとんどの事業が該当します。また「一定の金額」とは事業主控除といって290万円までは個人事業税が課税されず、290万円を超える事業所得又は不動産所得がある場合に290万円を超過した金額に税率を乗じた金額が課税されます。
税率は業種により異なり、「3%」「4%」「5%」の3種類の税率のいずれかを乗じることになります。
所得税の確定申告をしている個人事業主は個人事業税について別途申告する必要はなく、確定申告で申告した事業所得、不動産所得をもとに個人事業税が計算され、決定した納めるべき個人事業税額が県税事務所から個人事業主に納税通知書によって通知されます。納期は原則として8月と11月の2回に分けて納めます。
個人事業税も計算の基礎は確定申告した事業所得または不動産所得によって決まりますので、誤った確定申告をすると必然的に個人事業税も誤った金額で計算されます。
⑤固定資産税
固定資産税は「土地」「家屋」「有形償却資産」を対象に「1月1日」に「その固定資産の所在する市町村」によって「固定資産の所有者」へ課税される税金です。(東京都23区では区ではなく都によって課税されます。)
ここで個人事業主が注意しなければいけない固定資産は「有形償却資産」です。「土地」と「家屋」については登記簿等で市町村がその実態を把握することができますが「有形償却資産」については個人事業主からの申告がなければ把握できない場合があります。
そこで、個人事業主は事業で使用している有形償却資産を1月31日までに償却資産申告書で市町村に申告する必要があります。申告の必要な有形償却資産と申告の必要ない有形償却資産があり、申告の必要ない有形償却資産まで申告してしまわないように注意する必要があります。
納税方法は市町村から送付される納税通知書によって納めることになります。納期は原則として4月、7月、12月、2月の4回に渡って納税することになります。
⑥住民税
住民税は道府県民税と市町村民税からなります。個人事業主の場合には道府県民税と市町村民税を市町村が一括して徴収するので、住民税として覚えておけばいいでしょう。
住民税の計算に必要な情報として、個人事業主の前年の1月から12月の所得金額が必要になります。個人事業主は確定申告をしているため住民税の計算に必要な情報はすでに市町村に揃っていることになります。
したがって、わざわざ個人事業主が住民税の計算をして納税するのではなく、役所で個人事業主の住民税を計算して金額・納期限を通知します。この通知は毎年6月に通知され、納期は6月、8月、10月、1月の4期である市町村が多いです。
ここで覚えておいていただきたいことは住民税の大部分は個人事業主の前年の所得金額により決まるということです。つまり、確定申告を誤ると、必然的に住民税も誤った金額で計算されてしまうのです。住民税の大部分は前年の所得金額により決まると言いましたが、ここで住民税はどのような計算によって決まるのかというと、前年の所得をもとに計算された『所得割』という金額と、所得金額は関係なくすべての人に共通した『均等割』という金額の合計によって計算されます。
所得割=(前年の所得金額-所得控除)×10%-税額控除
均等割=5,000円
上記の計算式はわかりやすいようにシンプルに表したものですが、これで所得割と均等割の金額のウエイトは理解できますよね。仮に300,000円の住民税を納めた場合、295,000円が所得割で5,000円が均等割ということです。そして、この295,000円の計算の根拠となっているのが、個人事業主の前年の確定申告ということです。
個人事業税や住民税などは個人事業主が申告した所得金額をもとに計算されます。正しい確定申告をすれば、正しい個人事業税、住民税を納税することができます。
税理士に記帳を任せた場合の個人事業主の所得金額と個人事業主が自分で記帳した場合の所得金額が一致することは少ないでしょう。なぜなら税理士は多くの個人事業主が見落としがちな経費として計上できるものを心得ているからです。
税理士に記帳や申告を丸投げするというと、『手間を省く』といった時間的なメリットが強調されがちですが、それに加えて『正確な納税』ができるので、個人事業主に経済的なメリットをもたらすことも多々あるのです。それに気付かずに大切な時間を削って一生懸命ご自分で記帳されて、過大な税金を納めている個人事業主をみると複雑な気持ちになるのです。